【短編小説】桜の樹の下には【書きたいよねえ〜】

短文小説
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あ~もう金曜日。書くことねえなあ。

Taromi
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ども。小説書きたいなって思うことありますよね。というわけで書きます。これぞ私物化。

 桜の樹の下には屍体があるなんて話がある。僕はそれを確かめるべく物置からシャベルを取り出し、こうして外に繰り出しているわけである。とはいっても僕はこの言葉を誰が述べたかも知らないし、そもそも真相なんて実はどうでもいい。僕にはなにか行動をするための口実が必要だったのだ。

 つまるところ暇なのである。

 諸事情により大学へ通いづらくなってしまった僕は、そのことを親に話す勇気も起きず、しかしながら実家ぐらしであった。そのため、日中は通学していないことを隠すためどうにかして暇を潰さなければならないのだ。

 はじめのうちは商業施設を利用して時間を浪費していたのだが、次第に貯蓄も底をついてしまった。僕はそうして、金のかからない暇つぶしを模索する必要に迫られたのである。その結果、フードを深くかぶり、小学生の身長ほどはあるシャベルを持って歩くようになってしまったのだ。さながら不審者、いやそのまま不審者である。

 家からそう遠く離れていない低山を少しばかり登ったところにある立入禁止の縄を跨ぎ、足場の悪い道を進んでいく。倒木を越えて2〜30メートルほど進むとそこには、もう冬もはじまろうかという時期に、一本だけ、薄桃色に美しく咲いた桜が立っていた。

 僕はさっそくその木の根元に近い地面を掘り進めたわけだが、まあ、焦らしてもしょうがないので結論から話そう。あくまで本日掘った場所のみに限った話だが、桜の樹の下に屍体はなかった。そのことに少し安堵すると、ふとそのような概念を生み出した人のことが気になり、調べてみることにした。どうやら梶井基次郎という人の著書らしい。少し読んでみることにした。

 アオゾラ文庫で5〜6行も見ているうちにどうやら眠ってしまったようで、空はすっかり明度を失っていた。こうして僕はまた一日を消費することができたのである。僕は掘り返した穴を埋めることなく帰路についた。

 家につくと音をたてずに物置へ向かう。そしてシャベルを元あった位置にきれいにもどすと、その先にあるものへと目を移す。いつまでもこの生活を続けることはできないとわかりながらも、前向きに行動することができない。そんな僕を象徴するようなそれは、変わらずにそこにあった。

 夕食を食べるやいなや自室に戻り、パソコンを開く。転載禁止と書かれた顔写真のリストをしばらく見ると、安堵とともにサインアウトして眠りにつく。少なくとも明日はまた、今日のようにすごせるだろう。

 夢をみた。よくみる顔が僕を責め立てる。僕が悪いことはよくわかっているのだと何度も伝えるが、同じ言葉を何度も僕に投げつける。お前が―――

 翌日になると僕は、桜の樹の下に掘った穴を埋めるため、シャベルとその先に置かれていたそれを持って例の場所へと向かった。

 隠していたわけではないのだが、実のところ桜の下を掘っていたのは昨日が初めてのことではなかった。計六ヶ所、1つあたり70寸は掘った。他の5箇所は以前に埋めていたのだが、昨日の分はそのままにしていた。しかしそれはさすがに危ないと感じたため、本日行動に移した次第である。そういう筋書きである。

 桜の樹に着くと僕は、昨日の穴を覗きこんだ。これで僕は前をみて進むことができる。そう思いながら物置にあったそれを放る。そうして昨日そのままにしておいた土の山にシャベルを突き刺すと、ふと背中に感触がした。

 華奢でしなやかな、しかしながら存在感のあるそれは、僕の身体を穴の底へと押し出した。慌てて地上を見上げるが、そこに人の姿はなく、代わりといわんばかりにせき止めのなくなった水のように土が流れ込む。消えていく視界と酸素を確かに感じながら僕は、今朝の夢を反芻していた。

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