撮影機材
この「オールドデジカメ」に分類される「PENTAX K10D」は、当時のデジタル一眼レフカメラの中でも革新的な機能と堅牢なボディで高く評価されていた。
いや、この K10D の吐き出す画でないと、どうもしっくりこない、という人がいるという点で、未だに高く評価されているのは言うまでもない。しかも古臭くないこのボディが今に通じているということは、既にこの機体は写真機として完成されていたということだろう。
今回、中古価格1万円の「PENTAX K10D」を手に入れ、再びその魅力を確かめてみようと考えている。
公式性能
- 有効画素数:1020万画素
- 撮像素子:23.5×15.7mmサイズの原色フィルター付きCCDセンサー
- ISO感度:AUTO/100~1600(1/3EVまたは1/2EVステップ)
- 記録媒体:SDメモリーカード、SDHCメモリーカード
- 液晶モニター:2.5型 約21万画素 低温ポリシリコンTFTカラーLCD
- ファインダー:ペンタプリズムファインダー、視野率約95%、倍率0.95×
- 手振れ補正:
- AF:TTL位相差検出式、SAFOX VIII(11点測距)
- AFエリア:オート、セレクト、中央の切り替え可能
- 動作環境:温度:0~+40℃、湿度:85%以下
「画質革命」
- 外観:堅牢でプロフェッショナルなデザインが特徴。
- 大きさ:手にしっくりと馴染むサイズ感。
- 重量:本体のみで約710g、バッテリーとSDカードを含めると約790gで、長時間の使用でも疲れにくい重量。
- ISO感度:ISO100から1600まで対応していますが、ISO400以上ではノイズが目立ち、ISO1600は非常用と考えたほうが良い。
- 液晶モニター:2.5型 約21万画素の低温ポリシリコンTFTカラーLCDを搭載しているが、ライブビュー機能はなく、撮影時はファインダーを使用する。
- AF:11点測距のSAFOX VIIIを採用し、AF速度は当時の標準的な性能で、特に遅さは感じない。
PENTAX K10D | 第一印象
早速ですが、手持ちのM42マウントレンズの中でも一番のお気に入りである「Super Takumar 55mm F1.8」をPENTAX K10Dに装着してみました。このカメラとの相性がここまでしっくりくるとは、予想以上です。
PENTAX K10Dは、CCDセンサーの搭載も魅力ですが、何よりオールドレンズがよく似合います。K10Dはフランジバックが長めのため、M42マウントのオールドレンズを装着する際に追加のアダプターが厚みを持たず、全体的なフォルムが自然に見えるのも嬉しい点です。
私はこのフォルムに見惚れて PENTAX K10D はM42マウントレンズのための母艦として運用しようかと考えています。CCDセンサーの色の厚みを活かすのには、やはりオールドレンズ特有の柔らかさが必要でしょう。
やはりM42レンズは一眼レフカメラで使いたい。
使い勝手の確認とインターフェース
さて、オールドレンズがよく似合うK10Dですが、実際の使い勝手も確認してみましょう。
液晶は2006年のカメラとしては標準的なサイズですが、今のカメラに比べると小さめです。私としては、写真が確かに撮影できたことを確認できれば十分なので、このサイズは特に気になりません。メニュー操作もほぼ不便は感じませんでした。
また、私はどっしりとカメラを構えてじっくり構図を決めるタイプなので、この小さめの液晶は、むしろシンプルに撮影に集中できる要素として好意的に受け止めています。
ボタン配置で珍しいと感じたのは、手振れ補正のレバーです。最近のミラーレスカメラでは液晶画面を通じたメニュー操作で設定を変更することが多いのですが、このK10Dには物理的なレバーが搭載されており、三脚に取り付けたり外したりする際にはこの操作がしやすいと感じます。初期の手振れ補正に関する工夫が形として残っているのが面白い点です。
次に、AFポイント用のダイヤルが十字キーの外周部に配置されている点も目を引きます。現在のPENTAX機にはこの形状は残っていませんが、液晶メニューがまだ成熟していなかった時代に、増える機能を物理ボタンやダイヤルで補っていたことがうかがえます。
こうして眺めていると、PENTAX K10Dをリアルタイムで使っていたユーザーたちは、新機能の増加とともにその操作性にも工夫を凝らし、試行錯誤しながら使いこなしていたのだろうと感じます。
機能が増えれば必ずしも便利になるわけではありませんが、できることが増えると楽しみも増えます。この PENTAX K10D はまさにその過渡期の一眼レフカメラといえるでしょう。
マウントアダプターと撮影の楽しみ
私はこの純正の小さなマウントアダプターを使用して、M42マウントレンズをKマウントのボディに取り付けています。
しかし、マウントアダプタ―とはもっと大きくて少なくとも50g以上はあるものというイメージがありました。
したがってここまで小さくて本当にマウントアダプタ―として正しく機能するのかという疑問がありますが、ここまで小さく薄く設計できているのは以下が大きな理由になります。
M42マウントとKマウントは同じフランジバック
このように設計されているため、このように薄いマウントアダプターだけでオールドレンズの資産を活かせるのです。
実際にアダプターを装着してみると、そのフィット感やちょうど良い収まりには驚かされます。このアダプターのおかげで、M42マウントのオールドレンズを気軽に活用でき、レンズの魅力を最大限に引き出せるのがとても嬉しいポイントです。
さらに、K10D のどっしりとしたボディが安定感を生み、撮影時の操作感も非常に快適です。これにより、ミラーレスにアダプターをつけた際に感じる不安定さやバランスの悪さから解放され、撮影に集中できるようになりました。
オールドレンズを使用することで、当時そのままのフォーマットで撮影できます。レンズもカメラも、まさに理想的な組み合わせです。
何より、ミラーレスにM42レンズを装着する際に生じるアダプターの厚みがずっと気になっていたので、デザイン的にもバランス的にも解放されたのが一番の喜びです。
例えば、CANONのEFレンズをSONYのEマウントボディに装着すると、レンズがやや大型化したように見えるため、バランスはそこまで悪く感じません。しかし、L39レンズやM42レンズをミラーレスで使用すると、デザイン面でも重量バランスの面でも違和感が大きいと常々思っていました。
ですので、PENTAX K10D でM42レンズを違和感なく使えることが、本当に嬉しいポイントです。
PENTAX K10D 深夜の多摩川スナップ
さて、外観ばかりほめていましたが、それは現在の PENTAX 一眼レフカメラにも通ずるものです。
今回私が PENTAX K10D を購入したのは、CCDセンサー のほぼ最終発展型ともいえるその良さを知ることが大きな目的です。カメラを見て触ってばかりでは良いものも本当に良いと言えないでしょう。
所有欲は満たせたので次に満たすべきは撮影欲です。早速、撮影に向かいましょう。
丁度カメラが届いたのが夜。次の朝に撮影に臨んでも良かったのですが、本日中に撮りに行きたい気持ちが勝ってしまいました。
CCDセンサーとしてはかなり厳しい環境でしょう。CCDセンサーがCMOSセンサーにシェアを奪われた理由として、コストの高さと電源効率の悪さがありますがもう一つの大きな理由があります。
高感度耐性が低い(ノイズが入りやすい)
PENTAX K10D は ISO100~1600 まで対応しているのですが、ISO1600まで上げてしまうとかなりノイズが目立ちます。したがって暗所ではCCDセンサーの弱みがかなり目立つのです。
ただし、ディティールが多少失われますが現像ソフトを使用すれば大分見れる写真になります。撮って出しにこだわりがある人にとっては CCDセンサーはかなり使いづらいでしょう。
私としては後処理してしまえばノイズ感はあまり目立たず、ディティールも最低限保たれていると感じたので、大きな弱みではあるものの使えないことはないと思いました。
以下が作例です。
CCDセンサー を搭載した PENTAX K10D であえて深夜にスナップに臨みましたが当時の雰囲気と共に撮影できたと感じます。
ノイズが気になる場合、ノイズ低減処理を行う方法もありますが、私は以下のような撮影時の工夫を試みました。
遠景や夜景を撮影するときには少し絞りたいところですが、オールドレンズは絞ったとしても極端にシャープになるわけではありません。そのため、今回はすべて開放絞りで撮影を行いました。
さらに、シャッター速度を少し速めに設定し、明るさの調整は後からソフトで補正する方針にしました。PENTAX K10Dは白飛びしやすい傾向があると言われていますが、22bitのA/Dコンバーターのおかげで諧調表現に優れ、特に黒潰れしにくいため、この方法で安定した結果が得られました。
実際に撮影した画像を確認すると、暗部の情報を引き出せており、この撮影手法はかなり有効だと感じました。
ここまで、使い勝手に関する課題を中心に書きましたが、やはりK10Dの描写力は確かで、写りの良さは一級品と言えます。古いカメラとはいえ、現代のデジタルカメラにはない味わいと立体感があり、深夜撮影においても雰囲気のある仕上がりが楽しめます。
PENTAX K10D おやつ時から夕方スナップ
今度は比較的明るい時間帯に撮影を行いました。
さて、このように光源が確保されている環境であれば、良い結果が得られそうです。
最初はカフェに立ち寄って物取りや近景の雰囲気を見ていきましょう。
液晶がチルトやバリアングルではないため、近距離での撮影が少し難しく感じましたが、これは贅沢な悩みかもしれません。ここは腕でカバーしていきたいと思います。
さて、写りについてですが、APS-Cセンサーながら今回はF1.8開放の Takumar レンズを使用したため、満足のいくボケ感が得られました。柔らかな写りも相まって、どこかレトロな情緒が色の厚みに乗り、表現に奥行きを感じることができました。これ以上ないほどの結果です。
さて、カフェを出ると辺りは薄暗くなっていました。もう一度、この暗所での撮影に挑戦してみましょう。
今回はノイズ低減処理を一切行わず、PENTAX K10D のありのままの写真を試しました。このカメラは、どんな環境であっても強い光源や空をフレームに入れたくなるような色のりが魅力です。
ダイナミックレンジは現代のカメラに比べるとやや劣るものの、むしろ取捨選択が求められるシーンでは撮影者の工夫次第で写したい要素をしっかり活かすことができます。
この制約があるからこそ、撮影者の感性が試され、撮るたびにこのカメラの奥深さに引き込まれていきます。
得だとか損だとか購入してから考えたくはないですが、この CCDセンサーの完成機と言える PENTAX K10D は買い得だったと断言します。
PENTAX K10D 購入レビューまとめ
今回、CCDセンサーを搭載したPENTAX K10Dを購入し、その期待をいい意味で裏切り、悪い意味では裏切らない魅力に再び感動しました。中古市場では、運が良ければ1万円以下で手に入れることができ、コストパフォーマンスは抜群です。
しかし、長期間放置された個体では内部コンデンサーが完全に放電しており、起動時に日付設定が必要になる場合もあるので注意が必要です。
このK10Dは、2000年代におけるデジタル一眼レフの革新を象徴するモデルで、堅牢なボディと、現代でも色あせないデザインが特徴です。写りに関しても、このカメラ独特のCCDセンサーの色の厚みとオールドレンズの相性が抜群で、深夜のスナップ撮影から夕方のスナップまで、ノイズが目立つ場面もありながら撮影者の工夫次第で奥行きのある写真が撮れます。
また、M42レンズをアダプターを介してKマウントボディに装着できる点も嬉しいところです。このシステムにより、レトロなボケ感と柔らかさを活かしつつ、ディテールと情緒ある表現が可能です。加えて、オールドレンズにおいて気になるアダプターの厚みの問題も最小限に抑えられ、違和感のないバランスで撮影が楽しめます。
PENTAX K10Dは、まさに「オールドデジカメ」として完成されており、単なるカメラ以上に、撮影者に工夫と挑戦を促す一台です。現代の便利なデジタルカメラとは一線を画し、撮るごとに味わい深さが増し、今もなお撮影者を惹きつけてやまない、そんなカメラに仕上がっています。このCCDセンサーの完成機ともいえるK10Dの価値は計り知れず、購入して大いに満足しています。
PENTAX K10D のおすすめ記事
コメント